相続手続きのキホン②~1.相続人の確認~
第2回目は、前回の全体の流れのうち「1.相続人の確認」をもう少し掘り下げてみたいと思います。
目 次
1.相続人の範囲
人の死により相続が開始します。亡くなった方のことを「被相続人」といい、その財産等を承継する人のことを「相続人」といいます。では「相続人」には誰がなるのでしょうか。
被相続人の配偶者
被相続人の配偶者(内縁は含みません)は、常に相続人となります。
下記第1順位~第3順位のいずれかの相続人がある場合は、それと同順位の相続人となります。
被相続人の子供(第1順位)
被相続人の子供(以下、「子」といいます)は、相続人となります。
子は、実子、養子、嫡出子(婚姻中に妻が懐胎した子のこと)、非嫡出子を問いません。
胎児(たいじ)
停止条件説と解除条件説
子が相続開始時に胎児(お腹の中にいる子のこと)であった場合は、出生したときに相続能力を取得するという「停止条件説」と、胎児に相続能力を認めたうえで、死亡して生まれた場合は、相続権を失うという「解除条件説」の対立があります。民法では「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」(民法886条1項)と規定されており、判例(裁判所の判決のこと)は「停止条件説」を採用していますが、登記実務は「解除条件説」を採用しており、胎児名義の登記を認めています。
胎児は遺産分割できるか
胎児は意思能力がないため遺産分割協議に参加できないこと、また、母が法定代理人となるという規定もないため遺産分割協議による相続登記はできません。
被相続人の親(第2順位)
第1順位の相続人がいない場合、被相続人の親が相続人となります。(ちなみに分かりやすさのため「親」と書きましたが正しくは「直系尊属」で被相続人の父母に限らず、祖父母以上も含まれます。)
被相続人が普通養子である場合は、実父母、養父母が同順位で相続人となります。特別養子の場合は、実方の親族関係は終了しているため実方の直系尊属は相続人になりません。(ただし、民法817条の9ただし書きの場合【夫婦の一方が他方の嫡出子の養親となる場合】を除きます。)
被相続人の兄弟姉妹(第3順位)
第1順位、第2順位の相続人がいずれもいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
代襲相続人
被相続人が死亡する以前に(同時死亡も含まれます)相続人(=被代襲相続人といいます)が死亡した場合、又は相続欠格に該当するなど相続権を喪失した場合は、当該相続人の子(=代襲相続人といいます)が相続人となります。
代襲相続は、第1順位の相続の場合(=子が相続人の場合)は再代襲(相続人の子の子が相続人となること)がありますが、第3順位の相続の場合(=兄弟姉妹が相続人の場合)は再代襲はありません。
2.相続人の欠格事由・排除
欠格事由(けっかくじゆう)
一定の行為(=欠格事由といいます)をした推定相続人(=相続人となるであろう人のこと)からその相続資格を奪う制度のことを相続欠格といいます。欠格事由は要約すると以下となります。
- 故意をもって、被相続人又は先順位、同順位の相続人を死亡させ、または死亡させようとしたため刑に処せられた者、被相続人の殺害を刑事告発しなかった者
- 詐欺又は脅迫により、被相続人の遺言行為を妨害した者又は、偽造、変造、破棄、隠匿した者
相続欠格は、被相続人の意思は関係なく、法律上当然に相続資格を奪う制度です。そのため、一度相続欠格事由に該当すると永久に相続資格を失うことになります。
推定相続人の廃除
遺留分(いりゅうぶん)を有する推定相続人が、被相続人に対し虐待や重大な侮辱を加えたり、又は著しい非行があったときは、被相続人は家庭裁判所にその推定相続人の廃除を請求できます。
廃除の制度は、当然に相続資格を奪う相続欠格とは異なり、被相続人の意思によって相続資格を奪う制度です。そのため、被相続人は、いつでも、相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求できます。また、遺言によって排除することも取消しすることも可能です。
投稿者プロフィール
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川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
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