相続における公正証書遺言について
遺言には種類があるというお話は、相続手続きのキホン③~2.遺言書について~でも少しお話しましたが、今回はそのうち「公正証書遺言」について取り上げてみたいと思います。費用は多少かかりますが、より確実な手段として利用されることが多いです。
目 次
公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)とは
公正証書遺言は、証人2人以上の立ち合いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人の面前で、口授し、それに基づいて、公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめ、遺言者、証人、公証人が署名押印して公正証書遺言として作成する遺言です。
遺言者が署名することができない場合は、公証人がその理由を付記して、遺言者の代わりに署名することができます。また、五感が不自由な人でも、公正証書遺言をすることができます。公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。
公正証書遺言のメリット
- 公証人が整理して作成するので、遺言者が法律に詳しくなくとも正確に作成することができ、方式の不備で遺言が無効になるおそれがありません。
- 公証役場で保管されるため、紛失や盗難の心配がなく、破棄(捨てる)、変造(内容を変える)、隠匿(隠す)などのおそれもありません。
- 家庭裁判所で検認の手続きを経る必要がありません。
- 遺言者の死亡後直ちに登記等の手続きをすることができます。
公正証書遺言のメリットは一言でいうと正確かつ確実な手段であるということです。自筆証書遺言と並んで一般的に多く利用されている遺言の方式です。
公正証書遺言のデメリット
- 印鑑登録証明書と証人2人等、若干手続が必要です。
- 遺言内容が証人2人から漏れるおそれがあるとはいえません。
- 費用がある程度かかります。
公正証書遺言の作成手数料
ここでいう「手数料」とは公証人に対して支払う費用のことをいいます。
公証役場で作成する場合の手数料
公正証書遺言の作成手数料はどのように計算するかというと、相続あるいは遺贈する資産の額で決まりますが、相続人あるいは受遺者ごとに計算します。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
上記は「証書作成手数料」であってこれに「遺言手数料(目的の価格が1億円まで11,000円)」と用紙の枚数によってかかる手数料が通常は数千円かかります。
例えば「長男1人に1億円までの財産を全部相続させる」ということであれば、
証書作成手数料 43,000円 + 遺言手数料 11,000円 + 用紙代 約3,000円 = 約57,000円
になります。
遺言者が病気等で公証役場に来られない場合は、公証人が出張することができますが、5割増しの手数料と日当がかかります。なお、詳細は公証人のホームページでも確認ができます。
遺言公正証書作成に必要な書類
基本的に以下の書類が必要となります。
1.遺言者の本人性を確認する資料
遺言者の
- 印鑑登録証明書(発効後3か月以内)
- 運転免許証
- パスポート
- 住民基本台帳カード
- マイナンバーカード
など本人の顔写真付きの公的な証明書。
2.相続・遺贈を受ける相手を特定する資料
遺言者が身内の方に相続あるいは遺贈する場合は、相続人の
- 戸籍謄本(遺言者と相続人の続柄がわかるもの)
まったく相続権のない第三者に遺贈する場合は、その人の
- 住民票
3.相続・遺贈する不動産の特定及び手数料算定の基礎となる資料
㋐不動産の場合には、土地・建物の
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 固定資産評価証明書または最新の納税通知書
いずれも必要となります。
㋑不動産以外の預金・株券等は
- その預金先、金額、銘柄、株数などのメモ等
4.証人を特定する資料
証人2名が必要となりますので、その証人の
- 住民票
が必要となります。
なお、公証役場に証人の手配を依頼することもできますが、その場合は不要となります。
※証人について
証人は夫婦でもよいですが、証人になれない者がいます。下記の者です。
- 未成年者
- 推定相続人
- 受遺者ならびにその配偶者
- 子・孫等の直系血族
証書作成当日に持参すべきもの
当日は、下記のものを公証役場まで持参する必要があります。
- 遺言者の実印(免許証等で本人性を証明する場合は、認印でも可)
- 証人2名の認印(※公証役場に証人の手配を依頼する場合は、不要)
以上、公正証書遺言についてご説明しました。
必要書類と手数料を用意すればあとは意外と簡単に思えるかもしれませんが、遺言については実際のところ複雑な面も多く、わからないことも出てくるかと思います。そんなときは専門家である司法書士までぜひともご相談くださいね。
投稿者プロフィール
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川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。
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