配偶者がいない場合の相続について②~遺贈と養子縁組~
前回は配偶者がいない場合の相続①~後見・信託~で財産管理方法として「任意後見」「信託」「法定後見」制度があるということについてお話しました。今回も同様、配偶者がいない場合の相続についてほかに利用できる制度「遺贈」「養子縁組」についてお話していきたいと思います。
配偶者がいない場合に特定の人に財産をあげたい場合
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自分に子供はおらず、父親は生きているが仲が良くない。弟がおり姪っ子がかわいいので、自分が亡くなったらその財産を姪っ子にあげたい。何か方法はあるのでしょうか。
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遺贈や養子縁組などを活用することが考えられます。
法定相続人・法定相続分はどうなる?
まずは、事例のケースで、そのまま本人が何もせず亡くなった場合の法定相続人は父親のみ(民889①)がすべて相続することになります。
1.遺贈を活用する
遺贈とは、「遺言によって第三者に財産の全部又は一部を無償で譲り渡すこと」です(民964)。姪っ子さんに全財産を取得させる旨の遺言書を作成することにより、実現が可能となります。
遺留分についてはどうなる?
もっとも、相続における遺留分について①でもお話しましたとおり、兄弟姉妹を除く法定相続人(今回のケースだと父親)には、遺留分(=亡くなった方の財産から法律上取得することが保障されている最低限の取り分)があります。遺留分の割合は、直系尊属(親など)は法定相続分(今回は1分の1)の3分の1です(1042①一)。
今回のケースで全財産を姪っ子さんに取得させるという遺言書を作成した場合でも、父親には3分の1の遺留分が保障されていますので、父親から姪っ子さんに対して、遺留分侵害額の請求がなされる可能性はあります。
無用な争いを避けるためにも、例えば「父親に対し遺留分の3分の1に相当する財産を相続させる」旨の遺言書を作成するなど、検討が必要となるかもしれません。
2.養子縁組を活用する
養子縁組とは、「実の親子関係がない者との間に法律的に親子関係を生じさせる制度」です。
養子縁組の方法には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類あります。詳細はまた別途記事を設けたいと思います。
遺留分についてはどうなる?
養子縁組した場合は、上記の遺贈と異なり、遺留分について考慮する必要がなくなります。姪っ子さんと養子縁組をすると法律上親子の関係が生じますので、法定相続人は姪っ子さんのみとなり、父親は相続人にはならないためです。もちろん、相続人でない者に遺留分は認められていません。
投稿者プロフィール
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川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
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