相続財産と終活について

Kuroshoshi

今回は、終活の観点から、相続財産となる財産について今からしておいたほう良いことについてお話していきたいと思います。

どの財産が相続財産になるか?

 相続時に被相続人に属していたすべての財産が、有形、無形を問わずに相続財産になります(民896)。相続手続きのキホン④~3.被相続人の財産について~において相続財産の範囲について記事にしていますのでご参照いただければと思います。
 終活においては、相続人のためにも、相続財産を一覧にして整理しておくとよいと思われます。

 また、相続財産のうち、遺産分割協議の対象となる財産と対象とならない財産がありますので、そちらについても以下で整理していきましょう。

遺産分割協議の対象となる財産

不動産

 不動産の「所有権」は遺産分割の対象となる代表的な財産です。また不動産の「賃貸借権」は不可分債権(=わけることのできない債権)となりますので、これも遺産分割の対象となります

 しかし、不動産の「使用貸借権」については、貸主と借主との個人的な信頼関係に基づく無償契約ですので、原則として借主の死亡により使用貸借権は消滅します(民599)。(ただし「建物所有を目的とする土地の使用貸借契約」においては、敷地上の建物所有の目的を重視すべきであるとして、借主が死亡した場合でも当然には終了しないという判例もあります(地判平5.9.14))

配偶者居住権は?

 配偶者の居住の権利についてで少しお話ししましたが、配偶者居住権ができたことにより、遺産分割において妻の選択肢が増えました

 例えば、夫が死亡し、相続人として配偶者(妻)と子3人で、遺産としては自宅の土地建物と少しの預金しかない場合、これまでは、遺産分割において妻が引き続き自宅に居住したいため自宅を取得すると法定相続分を超えるため、預金は何も取得できず、場合によっては代償金を支払わなければならないことになり、配偶者の将来の生活が困窮するような場面がありました。

 配偶者居住権が認められたことにより、妻は「自宅は取得しないで、預金を多く取得し、一定期間自宅に居住することを選択する」か、「配偶者居住権を取得し、その評価額を差し引いた預金を取得し、終身自宅に居住することできる権利を取得する」かの選択ができるようになりました。

ゴルフ会員権

 ゴルフ会員権には、社団会員制、株主会員制、預託金会員制の3つの形態がありますが、形態ごとに検討する必要があります。

①社団会員制

 社団会員制のゴルフ会員権は、一身専属的な権利であり、定款で相続による承継を認める規定がない限りは、相続されないと解されています。

②株主会員制

 株主会員制の場合は、株主としての地位は遺産分割の対象となりますが、ゴルフクラブの会員になるには入会の承認が必要とされているため、入会の資格が審査されることになります。

③預託金会員制

 多くがこの形態となります。判例は、ゴルフ場施設を利用できる会員としての資格は一身専属的権利を有するのに対し、会員契約上の地位は、ゴルフクラブの会則により譲渡による承継を認めている場合、ゴルフクラブ入会承認を停止条件として対象となると解されています。

不動産や会員権等の終活について

 土地の権利証やゴルフ会員権、預託金証書などを貸金庫に預けている方は、貸金庫の所在、番号等とともに、そこに何が入っているのかもまと一覧に記載しておくとよいでしょう。

 不動産に関しては、登記簿謄本(登記事項証明書)や抵当権の有無についてもまとめておくと、相続人はとても助かるかと思われます。

現金・預貯金、投資信託、有価証券(株式・国債)・社債等

 これらは遺産分割の対象となります

現金・預貯金・有価証券等の終活について

 金融機関は合併をなどしますので、現在の会社名ではない合併前の通帳のままであったりなどしますが、できる限り最新の状態にしておいたほうが、後の手続きで手間がかかりません。
 また、金融機関名(証券会社名)、支店名、口座番号の一覧表を作っておくとより賢明です。

死亡退職金

 死亡退職金は、死亡退職金の支給規定があるか否かで決めることになります。規定がある場合は、規定に従い、規定がない場合は、従来の支給慣行や支給の経緯等を勘案して個別検討します。

生命保険金

 生命保険金は、保険契約において、受領人をどのように定めているかによって決まります。

  1. 受取人を特定の相続人と定めている場合
    受取人が保険金支払い請求権を取得しますので、遺産分割の対象とはなりません
  2. 受取人を指定しなかった場合で「被保険者の相続人に支払う」との保険約款がある場合、法定相続分の割合で各相続人が取得することになるので、遺産分割の対象とはなりません
  3. 保険契約者が被保険者及び受取人を兼ねる場合
    相続人を受取人と指定する黙示の意思表示があったものと解され、相続人固有の財産となり、相続財産にはなりません

生命保険金の終活について

生命保険金の受給者を誰にしているか、請求の手続き等の書類をまとめておきましょう。

動産(ペット含む)

 動産を遺産分割の対象とするにはこれを特定する必要があります。

ペットは動産なの?

 実は、法律上ペットも物の扱いとなり、動産となります。ですので、ペットに財産を相続させたいという方もいらっしゃるかと思いますが、ペットに財産を相続させることはできません。死後にペットの世話を誰かにお願いする方法については後日の記事を改めて設けたいと思います。

遺産分割協議の対象とならない財産

債権・債務

 債権・債務については、遺産分割協議までの相続財産の帰属についての記事で述べましたが、遺産分割の対象となりません

葬儀費用、祭祀承継

 葬儀費用は、主催者が葬儀を行いますので、遺産分割の対象となりませんしかし、葬儀費用・祭祀承継ともに、相続人全員の合意により遺産分割の対象とすることはできます

 祭祀承継は、被相続人による指定がない場合は、慣習に従って主宰者が承継します(民897)。なお、遺産分割協議のなかで相続人全員の合意により祭祀承継者を決めることもよく行われてます。

法定果実及び収益

 相続開始後の賃料や株式配当金などの法定果実は、相続財産ではなく、各相続人が法定相続分に応じて取得するとされていますので、遺産分割の対象とならないのが原則です(最判平17.9.8)。ただし、相続人全員の合意により遺産分割の対象とすることはできます

遺産管理費用

 遺産管理費用とは、相続開始後に発生した固定資産税や火災保険料、支払賃料などの費用のことをいいますが、これらは相続開始後の債務の負担ですので、遺産分割の対象とはなりません。ただし、相続人全員の合意により対象とすることはできます

投稿者プロフィール

川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
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