相続放棄の手続きについて

Kuroshoshi

相続放棄については一度記事にしてはおりましたが(参照記事:相続の承認・放棄について)、今回はその手続きについてのお話です。

相続放棄の手続きの概要

 相続放棄とは、相続人が自分に生じた相続の効力を否定する意思表示をすることで、その相続人が、その相続に関しては初めから相続人ではなかったものとみなされること(民法939)をいいます。 被相続人の債務がプラスの相続財産を上回ってしまっている場合などに、相続人が債務を負いたくない、といった場合における救済的な制度となっています。

 相続の放棄をしようとする者(申述人)は、熟慮期間内に(民915①)、被相続人の最後の住所地(相続開始地)を管轄する家庭裁判所に申述書(相続放棄の申述の受理審判の申立書)などを提出し、相続放棄をする旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。

相続放棄の申述に必要なもの

 相続放棄に必要なものは以下の通りです。

  • 相続放棄申述書
  • 申述人の戸籍謄本 1通
  • 被相続人の戸籍(除籍)謄本等 各1通
  • 収入印紙 800円(申述人1人につき)
  • 郵便切手 410円(82円×5枚。ただし、家庭裁判所により異なる場合あり)

家庭裁判所による申述人に対する照会

 上記の書類等を家庭裁判所に提出すると、家庭裁判所から申述人に対し照会の書類(「回答書」といいます)が届きます。 

 家庭裁判所にもよりますが、申述書の提出から、おおよそ1か月程度で申述人へ郵送されます。司法書士が代理して申述書を作成し家庭裁判所に提出した場合であっても、回答書は申述人に届きます。
 その際、申述人が照会に対する回答をするにあたり署名・押印する必要があるのですが、申述書と回答書の印影は同一である必要があります。

相続放棄を選択するにあたっての注意事項

 相続放棄をしてしまうと、初めから相続人ではなかったものとみなされます。また相続放棄を検討するにあたっては、相続人が以下に該当していたら単純承認したとみなされ、相続放棄ができなくなってしまう場合(「法定単純承認」といいます)もありますので、留意が必要です。

3か月の期間経過による法定単純承認

 相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に限定承認または相続放棄をしないと、単純承認したものとみなされます(民921二)。

限定承認または相続放棄をする前の法定単純承認

 相続人が相続財産の全部または一部を処分(ex.不動産の売却や債権を取り立てて受領した場合など)したときは、単純承認したものとみなされます。

 この「処分」には、相続財産である建物を放火したり損壊したりした場合などのいわゆる「事実行為」も含まれます。ただし、意図的でない失火は処分に当たりません

 また、保存行為や短期賃貸借は、処分に当たりません。相続人は相続財産を管理する立場にありますので、これらの行為をするのは当たり前だからです。

限定承認または相続放棄をした後の法定単純承認

 相続人が相続財産の全部または一部を隠匿し、ひそかにこれを消費し、または、悪意でこれを相続財産の目録に記載しなかった時は、相続放棄をした後であっても単純承認したものとみなされます。

熟慮期間伸長の申立て

 相続財産の調査が、相続開始があったことを知った時から3か月(熟慮期間)を超えそうな場合は、熟慮期間を伸ばすことができる場合があります。

 熟慮期間伸長の必要性を明らかにしたうえで、家庭裁判所に熟慮期間伸長の申立てをすることができます(民915①但書)。伸長できる期間は、その理由により異なりますが、おおむね3か月であることが多いです。

 伸長した期間内に相続財産の調査を終えることができない場合は、再度の伸長を申し立てることもできます。

 以上、相続放棄の手続きについてご説明しました。
手続についてわからないこと、不安や悩みがありましたら、川崎の司法書士黒坂事務所までお気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。