養子縁組について①~普通養子縁組~

Kuroshoshi

今回は「養子縁組」についてお話していこうと思います。子供が欲しい場合や相続させたい人がいる場合に利用されることが多い制度です。養子縁組は「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類ありますが、今回は主に普通養子縁組についてみていきます。

養子縁組(ようしえんぐみ)とは

 養子縁組とは、実の親子関係がない者の間に法律上の親子関係を生じさせる制度です。養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します(民809)。 「子供が欲しい」といった場合や、子は第1順位の相続人となりますので「特定の人に自分の財産を全て相続させたい」といった場合に利用されることが多い制度です。

養子縁組したら親権はどうなる?

「親権(しんけん)」とは、未成年の子に対する父母の権利義務の総称をいいます。親権の内容は以下の2つに分けることができます。

  • 身上看護権(みのうえかんごけん)
    親権者は、子の身上看護について決定する権利義務があります。教育をする(民820)、住む場所を定める(民821)などです。
  • 財産管理権(ざいさんかんりけん)
    親権者は、子の財産を管理する権利義務があります。

 養子が未成年者の場合、養親が養子の親権者となり、実親の親権は消滅します(民818②)。

養子縁組の種類

 養子縁組には、普通養子縁組と、特別養子縁組の2種類があります。

普通養子縁組とは

 普通養子縁組とは、実の親(=「実親」といいます)との親子関係を継続したまま新たな親(=「養親」といいます)と親子関係を生じさせる養子縁組です。養親との間で法律上の親子関係が成立しますが、実親との親子関係が解消されるわけではありませんので、養子は実親の相続人であり、養親の相続人にもなります。

普通養子縁組するための要件

 普通養子縁組するには、いくつかの要件があります。

  • 養親の年齢
    養親となる者は、独身でも可能ですが、20歳以上である必要があります(民792)。
  • 尊属(そんぞく=上の世代のことです)又は年上(=「年長者」といいます)を養子とすることはできない(民793)。
  • 後見人が被後見人を養子とする場合
    家庭裁判所の許可が必要です(民794)。後見人が養親になるのは怪しいからです。
  • 未成年者を養子とする場合
    原則として家庭裁判所の許可が必要です(民798)。ちゃんと育てられる親か見極める必要があるからです。
    例外的に、養親が自己又は配偶者の直系卑属(ちょっけいひぞく=子や孫など)を養子とする場合、不要となります(民798但書)。直系卑属であればちゃんと育てるだろうと考えられるからです。

    また、養子となる者が15歳以上であれば養子本人の意思で養子となることが可能ですが、15歳未満の場合には養子の親権者の承諾が必要となります。
  • 配偶者のある者が未成年者を養子とする場合
    原則として、夫婦が共に養親となる必要があります(民795)。例外的に、夫婦の一方Aが他方Bの嫡出子を養子とする場合は、その他方Bの同意があれば共にする必要はありません(民795但書、796本文)。
  • 配偶者のある者の縁組の場合
    養親又は養子に配偶者がいる場合、その配偶者の同意が必要です(民796)。

普通養子縁組をする方法

 普通養子縁組をするには、養親と養子の両者の合意に基づいて、養親もしくは養子の本籍地もしくは住所地の市区町村役場に養子縁組届出書等を提出することにより成立します。もちろん、上記要件をクリアしていることが前提です。

 いかがでしたでしょうか。
 普通養子縁組は例えば「相続人は一人いるが、その相続人とは仲が悪く疎遠な関係にあり、自分と仲が良くずっと気にかけてくれていた特定の人(パートナーや友人など)に全財産を取得してもらいたい」といったように、自分の財産を取得させたい特定の人がいるケースに利用されることが多いかと思われます。

 次回は特別養子縁組についてみていきます。普通養子縁組とどのように違うのでしょうか。

投稿者プロフィール

川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
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