認知に関する遺産分割協議上の注意点

Kuroshoshi

今回は認知に関してお話していきます。認知とはどのようなものなのでしょうか。また認知に関し、遺産分割協議をする際に注意すべき点があります。

認知(にんち)とは

 妊娠と出生がいずれも婚姻中ではない子のことを「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」といいます(逆に、婚姻中に妊娠もしくは出生した子は「嫡出子(ちゃくしゅつし)」といいます)。例えば、未婚の男女から生まれた非嫡出子がDNA鑑定で血のつながりがあるとされたとします。この場合、実は父と非嫡出子との関係は、法律上は親子関係があるとはされません。親子関係があるとされるには、血のつながり+「認知」が必要なのです。

 認知には、以下の2つの種類があります。

  1. 任意認知(にんいにんち)
    父が認知届を出すことによってします。「この子は私の子である」と届け出ます。
  2. 強制認知(きょうせいにんち)
    任意認知がない場合に、子から父に対してします。「あなたの子だと認めろ」と訴えます。 

認知の方法

 任意認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってします(民781①)。市役所や区役所に認知届が置いてあります。なお、任意認知は遺言ですることもできます(民781②)。

 強制認知は、子やその直系卑属(ちょっけいひぞく=孫など)やその法定代理人(親権者など)から父に対して認知の訴えによってします(民787)。強制認知は父の生存中であればいつでも訴えを提起できますが、父が死亡した後は、死亡から3年以内という期限があります(民787ただし書)。

認知の効果

 認知によって、父と子の間に法律上の親子関係が生じ、扶養義務や相続権が発生します。その効果は、父に出生時からの養育費を払わせることなどを目的としているため、出生時にさかのぼって生じます(民784)。

認知をめぐる遺産分割協議上の注意点

 認知の基本的な話はここまでにして、本題の遺産分割協議上の注意点に入りたいと思います。
 遺産分割協議は相続人の全員で協議する必要があり、一部の相続人を除いてされた協議は無効です。父と非嫡出子の法律上の親子関係を生じさせるには、認知が必要です。

 ここで問題となるのが「認知の時期」です。父の生前に認知されていれば問題なく分割協議の当事者となりますが、父の死後に認知された場合はどうなるでしょうか。下記事例を基に理解していきましょう。

亡父の遺産分割協議が成立した後に、父に隠し子がいたことが判明しました。この場合、既に成立したはずの遺産分割協議はどうなるのでしょうか。

「認知の時期」が遺産分割の前であるか、後であるかによって効果が異なります(民910)。

認知の時期が遺産分割の前(生前認知などで遺産分割の時にすでに認知されていた、など)である場合は、その非嫡出子を除いてされた遺産分割協議は無効となり、その非嫡出子は遺産分割協議の再分割請求をすることができます。認知されたことは、父の戸籍にも記載されるため、他の相続人にもわかるためです。

一方、認知の時期が遺産分割の後(認知の訴えや遺言によって認知した、など)である場合は、非嫡出子が参加しなかったことを理由に遺産分割協議が無効となることはなく、自己の相続分に応じた価格のみによる支払い請求権を有するにとどまり、再分割の請求をすることはできません。分割協議時点では認知されておらず、戸籍に記載されていないため、他の相続人にはわからないからです。

 以上、この点に注意してから遺産分割協議をしましょう。父の戸籍をしっかり確認する必要がありますね。

 戸籍を解読するのは難解な場合もあります。そんなときはぜひ専門家である司法書士に相談してみてくださいね。

投稿者プロフィール

川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
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