会社の設立について⑦会社設立登記を申請する
今回は前回に引き続き、会社を設立するにあたり会社設立登記を申請することについてのお話です。
会社概要を決めたあと、会社の運営に関する基本的なルールである定款の作成を作成し、公証人による認証を受け、資本金を払込んだら、いよいよ会社設立登記を申請します。
目 次
会社設立の基本的な流れ
会社を設立するには基本的に以下の手順が必要となります。
- 会社概要の決定
会社名(商号)、目的(事業内容)、本店所在地、資本金、役員構成など(株式、事業年度、公告方法など)を決定します。 - 定款の作成
会社のルールを定めた「定款(ていかん)」を作成します。 - 定款の認証
株式会社の場合、公証人による定款の認証が必要です。 - 資本金の払込み
金融機関に資本金を払い込みます。これにより会社の運転資金が確保されます。 - 登記申請・完了
必要な書類を準備し、法務局に登記申請を行います。
会社設立登記の申請先と期限
会社設立登記の申請は、会社の代表者が「会社の本店の所在地を管轄する登記所(法務局・地方法務局又はこれらの支局・出張所」に対して行います(会社911①②)。会社代表者の代理人(司法書士など)が登記申請することもできます。
発起設立(ほっきせつりつ=株主となる者が発起人のみの場合の設立形態のこと)の場合は、以下のいずれか遅い日から2週間以内にする必要があります(会社911①、商登1の3)。
- 設立時取締役等の調査が終了した日
- 発起人が定めた日
株式会社の設立登記申請の事例(発起設立の場合)
株式会社の設立登記申請書には、法定の書面を添付する必要があります(商登47②~④)。書類の作成方法は、法務局のホームページ(商業・法人登記の申請書様式)に掲載されています。
以下の簡単な事例で必要な書面を挙げてみます。
【株式会社の発起設立の事例(一人会社の場合)】
令和6年9月9日、発起人Aは、株式会社を設立するため、司法書士事務所を訪れ、会社設立の登記を当該司法書士に依頼した。また、以下の事項を定めた。
商号 A株式会社
本店 神奈川県川崎市川崎区一丁目1番1号
公告をする方法 官報に掲載してする
目的 1.情報関連機器の販売及び保守
2.上記に附帯する一切の業務
発行可能株式総数 10,000株
発起人Aが割当てを受ける設立時発行株式の数(発行済株式の総数) 1,000株
払い込むべき金額(資本金の額) 1,000万円
株式の譲渡制限に関する規定(※1)
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。
設立時取締役 A
設立時代表取締役 神奈川県川崎市川崎区一丁目1番1号 A
会社設立日 令和6年9月18日
同日、当該司法書士は、本人確認のため「Aの運転免許証」を確認するとともに、Aに実印の作成と「印鑑登録証明書」の取得をお願いした。さらにAは、「法人の実質的支配者に関する報告書」を提出し、Aは暴力団等に該当しないことを表明保証した。
令和6年9月10日、司法書士は、定款を作成し、公証人に内容の確認をお願いするとともに、発起人Aが作成した「実質的支配者の申告書」、「Aの運転免許証コピー」を提出し、同時に定款認証の予約をした。
令和6年9月12日、司法書士は、公証人から内容の確認の回答を受け、発起人Aは定款の内容を確認し、発起人Aの銀行口座に払込金額の全額を払い込んだ。Aは、「払込み書の通帳コピー」と「印鑑登録証明書」を司法書士に提出した。
令和6年9月13日、司法書士は、公証人による定款の認証を受けた。
令和6年9月18日 司法書士は、会社設立登記を横浜地方法務局に申請した。
株式の譲渡制限に関する事項って?
株式を自由に譲渡できるとなると会社にとって想定できない者が株主となる可能性があります。それを未然に防止するため、株式に譲渡制限をつけることができます。株式の全部に譲渡制限がついている会社のことを非公開会社(ひこうかいがいしゃ)といいます。
なお、譲渡を禁止することはできず、譲渡するには会社の承認が必要という制限をつけることができるということになります。
会社設立登記に必要な添付書類
上記の事例で登記申請に必要な添付書類は以下のとおりです。
- 定款(司法書士の電子署名入り)
- 発起人の同意書
- 払込みがあったことを証する書面
- 発起人の過半数の一致があったことを証する書面(設立時取締役の選任と本店の所在場所を決めた書面)
- 設立時取締役の就任承諾書(個人の実印)
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 印鑑証明書(就任承諾書に押印した実印についての)
- 委任状
会社の設立日っていつになるの?
会社の設立日(成立日)は、登記を申請した日になります。上記の例ですと、令和6年9月18日です。
株式会社の設立登記に必要な登録免許税
株式会社の場合、会社設立登記に必要な登録免許税は「資本金の額×1000分の7」もしくは「15万円」のいずれか高い額となります。
上記の例ですと、資本金が1,000万円 × 1000分の7=7万円 < 15万円ですので、登録免許税は15万円となります。「最低15万円は納付してください」ということです。
以上、会社の設立登記申請についてご説明しました。
会社設立する際に何かわからないことがありましたら、会社設立登記の専門家である司法書士の黒坂事務所までお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール
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川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。
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