判断能力を欠く相続人がいる場合の遺産分割について
今回は判断能力を欠く相続人がいる場合の遺産分割についてお話します。相続人が判断能力を欠く場合は、遺産分割協議をするためにどうしたらよいのでしょうか。
目 次
判断能力を欠く相続人がいる場合の遺産分割の方法
相続分を有する者の一部に判断能力を欠く者がいる場合、遺産分割を成立させても遺産分割は無効となります。その場合、成年後見人を選任し、成年後見人が法定代理人として遺産分割に参加し、遺産分割を成立させることになります。
成年後見人の選任方法
成年後見は、申立権者による申立に基づき、家庭裁判所による後見開始の審判があったときに開始され(民7、同838二)、後見開始の審判をするときは、家庭裁判所は職権で、成年後見人を選任します(民843①)。
後見開始の申立権者
後見開始の申立権者は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人または検察官ですが(民7)、配偶者または4親等内の親族が申立人となることがほとんどです。
後見開始の審判事件の管轄と申立方法
後見開始の審判事件は、成年被後見人となるべき者の住所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属します(家事117)。
また、申立は「申立書」を管轄裁判所に提出することによりなされます。
後見開始の審判の申立に必要な添付書類
申立に必要な添付書類は以下のとおりです。
- 本人の戸籍謄本及び戸籍の附票
- 成年後見等の登記がされていないことの証明書
- 家庭裁判所が定める様式による本人の診断書
- 本人の財産の目録・収支予定表及びこれらの根拠となる資料(不動産登記事項証明書、預貯金通帳、年金の支払額通知書等の写し)
- 事情説明書
- 親族関係図
- 及びその他の各家庭裁判所が定める書類等
成年後見人の権限
後見人は、被後見人の財産を管理し、かつその財産に関する法律行為について被後見人を代理します(民859①)。後見人に付与されている代理権は、被後見人の財産行為全般に広く及びます。
他方、後見人はその事務処理について家庭裁判所の監督を受け、家庭裁判所に対し、後見事務について定期的に報告しなければなりません。また、居住用不動産の処分(民859の3))をする場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
成年後見人が遺産分割する際に注意すべき点
成年後見人は遺産分割に参加する権限を有していますが、上記のとおり家庭裁判所の監督に服しますので、遺産分割の内容が被後見人の権利を害するものであってはならず、法定相続分を下回ることのないように注意するべきです。
成年後見人を選任する制に注意すべき点
確かに判断能力を欠く相続人がいる場合には、成年後見人を選任すれば、遺産分割をすることができ相続手続きを進めていくことができますが、成年後見人が選任された場合に認識しておくべき以下の点があります。
- 後見が開始された場合、被後見人が死亡するまで後見が継続すること
- 親族以外の第三者の専門家が後見人に選任されると、財産額に応じて専門家に対する報酬金が発生すること
以上、判断能力を欠く相続人がいる場合の遺産分割について概要を説明しました。成年後見人を選任することにより相続手続きを進めていくことができますが、後見の申立は申立人が行わなければなりません。申立てに当たりどのような負担が発生するかなど専門的で難しいケースもあります。そのようなお悩み・不安等ありましたら、専門家である司法書士黒坂事務所までお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール
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川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。
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