寄付について
今回は、最近ニーズが高まってきている「寄付」についてのお話です。寄付の方法はいくつかあります。
目 次
寄付ニーズの高まりと寄付の方法
日本社会の高齢化や単身世帯が増加に伴い、寄付によって、自分が亡くなった後に財産を社会貢献のために役立てたいという方が増えています。
寄付の方法としては、以下の4つの方法が考えられます。税制面や法的リスクの観点から、それぞれ気を付けるべきポイントは異なります。
- 生前に行う
- 遺言又は死因贈与によって行う
- 信託によって行う
- 本人死亡後に相続人らが行う
①生前に寄付を行う場合に知っておきたいこと
不動産を寄付する場合
不動産を寄付することもできますが、不動産を現状のままで受け入れる団体等は少ないようです。不動産の金額は、評価者・評価方法によって上下しますし、換価の際は名義変更の手間や費用、内部の動産の処分も必要となります。
また、なかなか換価できない場合、管理の負担が増したり、活用が困難となることも考えられます。そのため、不動産を寄付する場合は、事前に受贈者となる団体との調整が必要となるかと思われます。
②生前に遺言(又は死因贈与)による寄付を行う場合に知っておきたいこと
一般的に遺言による寄付のほうが死因贈与よりも多いため、遺言で説明します。知っておきたいことは以下のリスクです。
- 相続人等が遺言の無効を主張するリスク
遺言者の法定相続人等が寄付に対して難色を示し、遺言の無効等を主張する可能性が否定できないことから、遺言によって寄付を行う場合は、公正証書によってすることが望ましいです。 - 受け入れ先のリスク
寄付を受けた団体が遺留分侵害額請求を受ける可能性、包括遺贈の場合はマイナス資産も承継する可能性があります。 - 清算型遺贈の場合のリスク
相続開始から売買契約・登記までに時間を要すると、その間に、法定相続人が相続登記を申請して、第三者に不動産の持分を譲渡する可能性や、相続人の債権者から差押えを受ける可能性があります。 - 相続税・法人税が発生するリスク
金銭による遺贈寄付が個人に対して行われた場合は、遺贈寄付を受けた個人には相続税が(相続税法1の3)、法人に対して行われた場合は法人税が課されます(法人税法22)。ただし、公益法人が法人税法上の収益事業を行っていない場合は、原則として課税対象となりません(法人税法4①)。
③信託による寄付を行う場合に知っておきたいこと
信託による寄付について知っておきたいことは以下のとおりです。
特定寄付信託
金銭を信託銀行等に信託し、その元本と運用益を毎年定期的に信託銀行から公益法人等に対して寄付をさせ、寄付を受けた公益法人等からの公益活動の状況について報告を受ける制度です。
この制度には、寄付先の候補を信託銀行がリストアップしてくれたり、寄付を受け取った団体から活動状況の報告を受けられたり、寄付金控除を受けられるなどのメリットがあります
遺言代用信託
遺言代用信託とは、生前に委託者が受託者に対して財産を信託し、受託者が信託財産を寄付することになりますが、寄付のタイミングは信託契約で定めておくことができます。
この制度は、委託者の生前にも死後にも寄付を行うことができることや、遺言による清算型遺贈のような遺言執行者による売却前に相続人が相続登記をしてしまうことを防ぐことができるメリットがあります。
④相続人による寄付
相続人又は受遺者が一定の団体等に寄付をすることを条件とする負担付遺贈の場合に相続人らが寄付を行った場合、その負担を控除した価格(当該遺贈のあったときにおいて確実と認められる金額に限る)を遺贈により取得したものとして、相続税の算定がなされるなど、税制面で知っておきたいことはありますが、この分野は税理士の分野ですので、ここではあまり詳細を説明することは控えたいと思います。
以上、寄付について概要を説明しました。財産管理の生前対策として、従来の遺言、任意後見、信託、遺産承継といった中に寄付を組み合わせることによって社会全体に対する財産の活用を促進することができます。しかし、寄付を行うに際しては、法的な側面、税務的な側面、心情的な側面からも考慮すべき点が多いことに留意する必要があります。
投稿者プロフィール
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川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
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