司法書士の遺産承継業務について①遺産承継業務とは
今回から数回に分けて、司法書士の業務の一つである遺産承継業務についてお話していきたいと思います。遺産承継業務とはどのようなものなのでしょうか。
目 次
司法書士の遺産承継業務とは
遺産承継業務(いさんしょうけいぎょうむ)とは、相続財産の管理や処分に関する業務をいいます。
具体的には、
- 依頼者との委任契約に基づく遺産承継業務
- 遺言執行業務
- 不在者財産管理業務
- 相続財産管理(清算)業務
があります。
司法書士は、司法書士法施行規則31条(以下「規則31条」)を根拠として、これらの遺産承継業務を行うことができます。これらは、その根拠条文から規則31条業務と呼ばれたりもします。
司法書士法施行規則
(司法書士法人の業務の範囲)
第31条 法第29条第1項第1号の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。
一 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、管財人、管理人その他これらに類する地位に就き、他人の事業の経営、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し、若しくは補助する業務
二 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により、後見人、保佐人、補助人、監督委員その他これらに類する地位に就き、他人の法律行為について、代理、同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
三 四 (略)
五 法第三条第一項第一号から第五号まで及び前各号に掲げる業務に附帯し、又は密接に関連する業務
司法書士の遺産承継業務の内容
①依頼者との委任契約に基づく遺産承継業務
依頼者(相続人)との委任契約に基づき、被相続人名義の資産の名義変更や預貯金等の払戻手続、あるいは資産の売却などの処分行為を中心に行う業務です。
委任契約(あるいは準委任契約)の性質上、民法の規定(民643条以下)に従い、業務の内容を自由に設定することができることから、依頼者の幅広いニーズにお応えすることが可能となります。(ただし、他士業で独占業務とされていることについては業務を委任することはできません。)
例えば、依頼者(相続人)のニーズがあれば、法律行為でない事務(例えば、遺品の整理や、納骨の手続に関する事務など)を業務の内容とすることもできます。
②遺言執行業務
遺言執行者(参照記事:遺言執行者について)として、遺言書に記載されている内容を実現します。
遺言書によって司法書士が遺言執行者に指定されている場合は、原則として、当該司法書士が遺言執行者に就職し遺言執行業務を行います。遺言執行者の指定がない場合は、家庭裁判所に自らを遺言執行候補者とする遺言執行者の選任申立てを行い、業務を行う場合もあります。
③不在者財産管理業務
不在者財産管理人(参照記事:相続人に行方不明者がいる場合)として、業務を行います。具体的には、不在者財産管理人を選任することで、他の共同相続人と遺産分割協議を成立させたい場合に利用されるケースが多いようです。
④相続財産管理(清算)業務
民法951~959条の規定に基づく法定の相続財産清算人は、相続の場面において被相続人に相続人がいない、あるいは相続人の存否が不明な場合に、利害関係人または検察官が申し立てることにより、家庭裁判所が選任します(民952①)。
相続財産清算人の権限
相続財産清算人の権限は、不在者財産管理人と同様、保存・利用・改良行為のほか、相続債権者や受遺者に対する弁済、弁済をするために必要に応じて相続財産を競売により換価することが認められています。
相続財産管理人が権限外の行為を行うには家庭裁判所の許可が必要です。弁済行為や弁済のための換価処分行為、被相続人名義の預貯金の解約・払戻手続は権限内の行為とされており、これらの行為に関してはいずれも家庭裁判所の許可は不要です。
相続財産清算人を選任する目的
相続財産清算人を選任する目的は様々ありますが、その一つとして「債権の回収」があります。例えば、被相続人に対して債権を有している相続人がおらず(相続人全員が相続放棄した場合も含む)、一方で被相続人に不動産等の財産がある場合は、相続財産管理人を選任し、財産を換価したうえで弁済を受けることができます。
また、相続人はいませんが、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養・看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者がいる場合には、特別縁故者が相続財産の分与を受けるために、相続財産清算人の選任を申し立てることができます。
以上、司法書士が取り扱う遺産承継業務の内容について簡単にご説明しました。
何かわからないことがありましたら、遺産承継業務の専門家である司法書士の黒坂事務所までお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール
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川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。
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