配偶者がいない場合の相続について③~終活~

Kuroshoshi

前回は配偶者がいない場合の相続②~遺贈と養子縁組~にて認知症になった場合に備えた財産管理方法として「遺贈」「養子縁組」制度があるということについてお話しましたが、これらはいわゆる「終活」の一つです。今回は、そのほかの「終活」についてできることをお話していきたいと思います。

終活について考えてみる

 「終活」とは「自分の人生のわりについて考え、準備をする動」のことをいいます。自分がこれまで築いてきた財産について、自らの意思で、自分が承継させたいと思う者につなぐ準備をしておく、ということです。

 何も準備しなければ、意図しない者に自分の財産が渡ったりなどしかねません。自分の判断能力が低下してしまったらなおさらどうなるかわかりませんので、自分が健康なうちから考え、準備しておく必要があるかと思われます。

 前回、前々回の記事でお話しした「後見」「信託」「遺贈」「養子縁組」という制度を利用することもいわゆる「終活」の一つですが、そのほかに終活について考えられることはあるのでしょうか。

疎遠な相続人に迷惑をかけないためには

自分には配偶者も子もおらず、両親と兄弟姉妹はすでに亡くなっており、甥(おい)が相続人になると思われます。甥は遠くに住んでおり疎遠なのですが、私が亡くなった後、甥にはできるだけ迷惑をかけないようにしたいと思っています。今から何かしておくことはありますか。

死後事務委任契約」の締結、「負担付死因贈与契約」の締結、「負担付遺贈」の活用などが考えられます。

死後に必要となる手続きにはどのようなものがあるか

 人が亡くなった場合に必要となる手続きについては、例えば代表的なものとして下記のようなものが挙げられます。

  • 関係者への連絡
  • 遺体の引取り
  • 葬儀・埋葬
  • 預貯金や株・不動産など資産の名義変更手続き
  • 医療費や入院費等未払い費用の支払
  • 不要な家財道具や生活用品等の処分 など

死後の手続きをどうするか

 上記の事例のように相続人がいても疎遠であったり、近親者がいないなどの場合、これらの手続きを実際に行ってくれる人がいないということが想定されます。また、疎遠な相続人に迷惑をかけたくないと思われることもあるかもしれません。

 そのような場合、本当に信頼できる人にこれらの手続きをお願いし、そのために必要なお金を預けるor贈与するor遺贈等しておくことが考えられます。もちろん財産や身の回りの整理などを行っておくことも必要です。

 以下、お金を「預ける」「贈与する」「遺贈する」ということについて詳しく見ていきましょう。

死後事務委任契約(しごじむいにんけいやく)とは

 まず、お金を「預ける」ということについては、本当に信頼できる人がいて、その人に上記の手続きをお願いする契約(=「死後事務委任契約」といいます)を締結するというものがあります。この場合には、お願いしたい手続きの内容をできるだけ具体的に定め、必要となる費用を預けるとともに、契約内容に応じた報酬を支払う必要があります。

負担付死因贈与契約(ふたんつきしいんぞうよけいやく)とは

 次に、お金を「贈与する」ということについては、本当に信頼できる人がいて、その人に上記の手続きをお願いする代わりに、自分の財産をその人にあげる契約(=「負担付死因贈与契約」といいます)(民554)を締結するというものがあります。

「負担付」とは、信頼できる人にとって上記の手続きをする負担が付いているということを意味します。「死因贈与」とは、贈与者の死亡によって効力を生じるということを意味します。
「負担の代わりに財産ただであげますのでお願いします」ということです。

負担付遺贈(ふたんつきいぞう)とは

 次に、お金を「遺贈する」ということについては、本当に信頼できる人がいて、その人に上記の手続きをお願いする代わりに、自分の財産をその人にあげる旨の遺贈(遺言による贈与のこと)をしておくというものがあります(民1002)。自分が亡くなったら遺言による贈与の効果が生じます。

3つの違いは?

まず、契約と遺贈の違いですが、死後事務委任契約と負担付死因贈与契約はいわゆる「契約」ですのでお互いの意思の合致があって初めて効力を生じます。一方、負担付遺贈はいわゆる「遺贈」ですので、契約とは異なり、一方的な意思表示(=「単独行為」といいます)で効力を生じます。なお、遺贈を放棄することは可能です(民986)。

次に、お金を支払う必要があるかの違いですが、死後事務委任契約は報酬を支払う必要があるのに対し、負担付死因贈与契約と負担付遺贈はいわゆる「贈与」ですので報酬を支払う必要はありません

以上、それぞれの違いを認識したうえで、改めて自分の財産をどうしたいかについて考えてみてはいかがでしょうか。わからないことがありましたら、専門家である司法書士までご相談くださいね。

投稿者プロフィール

川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。