相続関係説明図について

Kuroshoshi

今回は「相続関係説明図」についてお話します。あまり馴染みがない言葉かもしれませんが、相続登記の原本還付を行うときに便利なものなのです。

相続関係説明図とは

 相続関係説明図(そうぞくかんけいせつめいず)とは、相続登記をする際に被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本(全部事項証明書)等の情報を一覧図としてまとめた書類のことをいいます。

 相続登記の申請の際、被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本(全部事項証明書)等を添付書類としてつけますが、その原本は後の手続き(金融機関への提出や相続税の申告など)にも使用するため、添付書類の原本の還付を請求します。

原本還付ってなに?

原本還付(げんぽんかんぷ)」とは、読んで字のごとくなのですが、添付書類の原本の還付を請求することです。登記の申請人は、申請書に併せて提出した添付書類の原本の還付を請求できます(不登規55①本文)。

 原本還付の請求をしなければ、添付書類は登記所に保存され、申請人のもとには却ってきません。しかし、原本還付の請求をすることで原本を返してもらうことができるので、その他の手続きにも利用でき、色々と助かるのです。

原本還付請求

 登記が完了した後は、原本の還付を請求することができません(昭和36.1.20民事甲168)。よって、登記の申請時点で原本還付の請求をします。

 原本還付を請求する添付書類については、その原本とともに「原本に相違ない」旨を記載したコピーを提出します(不登規55②)。登記官は、原本とそのコピーを照合し、調査完了後に原本を申請人に還付(返還)します(不登規55③)。

 コピーが複数枚にわたる場合は、コピーの綴り目(例えば1枚目と2枚目の)に印鑑を押してつなげます(=契印=「ちぎりいん」といいます。)(不動産登記の場合)。

 「原本還付」については後日改めて記事にしたいと思います。

原本還付の際に特殊な添付書類としての相続関係説明図

 原本還付を請求する場合、原本のコピーも提出するのが原則なのですが、相続関係を証する書面についての原本還付については、特殊な取扱いが認められています。それは、相続関係を証する戸籍全部事項証明書のコピーの提出に代え、「相続関係説明図」を提出すればOKとされています(昭39.11.21 民事甲3749.平17.2.25民二.457)。

 戸籍事項全部証明書等は、事案によっては数百枚になることもあるので、申請人の負担を考え、このような取扱いが認められています。数百枚コピーするのは大変ですからね。

相続関係説明図作成に必要な書類

 相続関係説明図を作成するために必要な書類は、相続登記に必要な書類と同一です。具体的には、

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(全部事項証明書)、改正原戸籍謄本除籍謄本(除籍全部事項証明書)
  • 被相続人の最後の住所がわかる戸籍の附票もしくは住民票の除票
  • 相続人の現在戸籍の謄抄本(全部(一部)事項証明書)
  • 相続人の現住所の分かる住民票の写し若しくは戸籍の附票の写し

相続関係説明図の作成で気をつけること

相続関係説明図に記載する情報

 相続関係説明図には、戸籍謄本(全部事項証明書)に記載されている情報のすべてが必要というわけではなく、被相続人については、

  • 氏名
  • 出生日
  • 死亡日
  • 最後の本籍地
  • 最後の住所
  • 不動産登記事項証明書上の住所

 相続人については、

  • 氏名
  • 出生日
  • 現在の住所

となります。

相続関係説明図の記載内容と書き方

 相続関係説明図は書き方が指定されているわけではありませんが、書かなければならない内容は決まっています。

  • タイトル
    相続関係説明図に書かれる被相続人の名前を書いておき、誰の相続関係なのかを一目でわかるようにしておきます(例:被相続人〇〇〇〇相続関係説明図)。
  • 被相続人の情報
    被相続人の氏名、出生日、死亡日、最後の本籍地、最後の住所、不動産登記事項証明上の住所を記載します。
  • 相続人の情報
    相続人の氏名、出生日、現住所を記載します。また、被相続人から見て相続人がどのような関係なのか、続柄(妻、夫、長男、長女等)を記載しなければなりません。
    この他にも、遺産を相続するのか、しないのかも明確にしておく必要があります。不動産を相続する人の欄には、単独で相続する場合は「相続人」、複数人で分割する場合にはその持分割合を欠きます。不動産を相続しない人の欄には「遺産分割」と記載しておきます。

以上の情報を記載し、右下に「戸籍謄抄本の原本は還付した」という文言を書いておきます。

 以上、相続関係説明図について概要を説明しました。相続関係説明図は相続登記のときに使用しますので、専門家以外の方が作成することはあまりないかもしれません。相続登記についてわからない、不安があるという場合は、登記の専門家である司法書士が代理でもすることができます。
 何かわからないことがありましたらお気軽に司法書士黒坂事務所までご相談ください。

投稿者プロフィール

川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。