相続手続きのキホン⑥~5.相続登記について~

Kuroshoshi

第6回目は、第1回目の全体の流れのうち「5.相続登記をする。」をもう少し掘り下げてみたいと思います。

相続登記はしないとダメ?

相続登記の義務化

 令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。それまでは相続登記をせずともなにもお咎めありませんでしたが、相続登記が長年されなかった結果、相続人が何人も登場するなど相続登記の手続きが煩雑化したり、所有者不明の不動産が増加するなどの弊害が生じていたことから「自分に相続があったことを知った時から3年以内」に相続登記をしなければ過料に処されることになりました。

相続登記をする方法

 相続登記をするには何が必要でしょうか。登記というのは実体の権利関係を公示する手続きですので、まずは遺言や遺産分割協議で、実際に財産を取得する相続人やその相続財産が確定していなければなりません。以下、それらが確定していることが前提でのお話となります。

相続登記に必要な書類

 相続による所有権の移転登記について必要な書類の基本形は以下のとおりです。

必要書類確認事項
被相続人の戸籍(除籍)謄本(全部事項証明書)・被相続人の出生から死亡までの本籍地が記載されたもの
被相続人の住民票の除票又は戸籍の除附票・被相続人の死亡時の住所が記載されているもので登記簿上の住所と合致しており、本籍地が記載されたもの(合致していなければ登記簿上の住所から死亡時の住所までつながるもの)
(つながらない場合は登記識別情報又は登記済証)
相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)・被相続人の死亡日以降に取得されたもの
相続関係説明図※※相続関係説明図を添付する場合、戸籍謄本(全部事項証明書)の原本還付を受けることができます。
法定相続情報一覧図※※法定相続情報一覧図を添付する場合、戸籍謄本(全部事項証明書)の提供が不要になります。また法定相続情報一覧図に相続人の住所の記載がある場合は、下記記載の「相続人の住民票の写し」も不要になります。
※従来は、法定相続情報一覧図の写し(証明書の原本)を登記申請書に添付して申請する必要がありましたが、令和6年4月1日以降、不動産登記の申請書の添付情報欄に「登記原因証明情報(法定相続情報番号(○○○○-○○-○○○○○))」と記載することで、法定相続情報一覧図の写しの添付を省略できるようになりました。
 この「法定相続情報番号」とは、法定相続情報を識別するために登記官によって付される番号をいい、法定相続情報一覧図の右肩に記載されます。
不動産を取得する相続人の住民票の写し不動産を取得しない相続人の分は不要です。
代理権限証明情報(委任状)申請代理人(司法書士)に対する委任状です。
固定資産評価証明書又は固定資産の納税通知書(課税明細書)・申請時点で最新年度もの
(固定資産評価証明書は毎年4月1日に最新となります。)

遺産分割協議がある場合

 遺産分割協議がある場合は下記書類が追加となります。

必要書類確認事項
遺産分割協議書・相続人全員の署名・実印が押印されたもの
相続人の印鑑証明書※有効期限はありません。
特別代理人の選任審判書※※相続人に未成年者(令和4年4月1日より18歳未満となりました。)がいる場合、遺産分割協議の内容について法定代理人(親権者など)の同意を得ることが必要です。ただし、この法定代理人も共同相続人となっている場合、遺産分割協議は利益相反となってしまいますので家庭裁判所に特別代理人の選任申立てをする必要があります。また、相続人中、子が複数いる場合、その数だけ特別代理人の選任が必要となります。
法定代理権を証する戸籍謄本※※相続人に未成年者がいる場合、未成年者と法定代理人の関係が分かるもの(作成後3か月以内)が必要となります。

遺言に基づく場合

 「自筆証書遺言」がある場合について基本形に加えて(一部異なる箇所あり)下記書類が必要となります。

必要書類確認事項
遺言書・検認済証明書が添付されているもの※
※法務局による保管制度を利用している場合は不要となります。
被相続人の戸籍(死亡が記載された除籍謄本等)※出生から死亡までそろえる必要はありません。
相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)※上記の基本形と異なり、遺言により不動産を取得する相続人のもののみで可(全相続人のものをそろえる必要はありません。)

 まだ細かな場合分けは必要ですが、とりあえず代表的なものを挙げてみました。何をそろえたらよいかわからない場合は、ぜひ登記の専門家である司法書士に相談してみてくださいね。

投稿者プロフィール

川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。