相続人がいない場合の財産について

Kuroshoshi

今回は、相続人がおらず、生涯孤独を愛して生きてきたけれど最近終活を考えるようになった、という方に読んでいただきたいお話です。相続人が誰もいない場合、財産はどうなってしまうのでしょうか。

相続人がいない場合の財産の行方

 相続人が誰もいない場合、借金等の負債・債務がなければ、原則すべての財産は国のものになります。「国庫に帰属(こっこにきぞく)」などともいいますが、相続人がいない当の理由で国庫に帰属する遺産額は増加傾向にあるようです。

相続財産が国庫に帰属するまでの流れ

 国庫に帰属するまでの流れは、以下のとおりです。

相続財産清算人の選任
 相続人がおらず、遺言もない場合、残された遺産は、利害関係人の申立てにより、家庭裁判所に選任された「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」が遺産の整理をしていきます。
相続人がいないかの調査と負債・債務の清算
 選任された相続財産清算人は、被相続人に、本当に相続人がいないかを調査し、被相続人に借金などの負債があれば、債権者に支払いをし、未払いの税金や公共料金などの債務を清算します。
 この時点で遺産がなくなれば、手続は終了となります。
特別縁故者による財産分与の申立て
 相続人が誰も現れず、まだ残余財産がある場合は、、被相続人の身の回りの世話をしていた等被相続人の生活に特別に貢献した「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」がいれば、その方から相続財産分与の申立てがなされると、家庭裁判所の判断に基づき、特別縁故者に対して相続財産を分与します。
国庫へ帰属
 それでもまだ残余財産がある場合は、そのすべてが国庫に帰属します。

 国庫へ帰属するまで最短でも1年程度の時間がかかります。

遺言書作成のすすめ

 「先祖から受け継いできた財産や自分が築いた資産を、国庫へ帰属させたくない。これまでお世話になった人に託したい、応援している団体の活動を支援したい」等の想いがあるのであれば、遺言書を作成することをおすすめします。

遺言書作成にあっての注意点

  • 遺言書を作成にあたっては、遺言書に記載漏れの遺産があると、相続財産清算人を選任する必要が出てきますので気を付けましょう。
  • また、「相続財産の2分の1をAに遺贈する」という財産の全部又は一部を包括的に指定した人に遺贈するような内容の遺言だと、被相続人に借金がある場合は、Aさんはその借金も2分の1を相続してしまうことになりますので注意しましょう。
  • 執行手続きを速やかに進めるためにも遺言執行者の指定も忘れないようにしましょう。

 「各々の財産を具体的にどうしたい」ということが明記された有効な遺言書があれば、原則として相続財産清算人を選任する必要はなくなりますので、有効な遺言書を作成できるようにしましょう。

 そのほかには、次の時代を担う人や社会に貢献したい、お世話になった学校や地域に恩返しがしたいという方の想いを実現できる「寄付(遺贈寄付)」という選択肢も(参照記事:寄付について)あります(詳細は、一般社団法人日本承継寄付協会のホームページをご参照ください)。

 以上、相続人が誰もいない場合に財産がどうなるのかについて概要を説明しました。そんなとき自分の財産をどうしたいかは遺言が有効となります。有効な遺言であるためにはある程度知識が必要となりますので、遺言を作成したいという方がいらっしゃったら相続の専門家である司法書士黒坂事務所まで、お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。