会社の設立について⑥資本金を払い込む
今回は前回に引き続き、会社を設立するにあたり資本金の払込みについてのお話です。必要な会社概要を決めたあと、会社の運営に関する基本的なルールである定款の作成を作成し、公証人による認証を受けます。
では資本金は「誰が」「いつ」「どこに」「どれだけ」払い込めばよいのでしょうか。
会社設立の基本的な流れ
会社を設立するには基本的に以下の手順が必要となります。
- 会社概要の決定
会社名(商号)、目的(事業内容)、本店所在地、資本金、役員構成など(株式、事業年度、公告方法など)を決定します。 - 定款の作成
会社のルールを定めた「定款(ていかん)」を作成します。 - 定款の認証
株式会社の場合、公証人による定款の認証が必要です。 - 資本金の払込み
金融機関に資本金を払い込みます。これにより会社の運転資金が確保されます。 - 登記申請・完了
必要な書類を準備し、法務局に登記申請を行います。
4.資本金の払込み
資本金とは、設立や株式を発行する際に、株主(となる者)が株式会社に払込みをした財産の額のことをいいます(会445①)。
株主(となる者)は出資と引き換えに株式をもらいます。出資の内容は金銭に限らず、不動産や債権など(「現物出資(げんぶつしゅっし)」といいます)もあります。
資本金って何のためにあるの?
株主の責任は「間接有限責任(かんせつゆうげんせきにん)」です。間接有限責任とは、株主は、株式会社の債権者に対して、株式の引受価格を限度としてしか責任を負わないということです(会104)。
このように株主は有限責任しか負わないとなると、債権者にとっては、株式会社の財産のみが最後のよりどころとなります。つまり、資本金は債権者のためにあるものなのです。
資本金の額の決定
発起人(ほっきにん=会社を設立する人)全員で以下を決めます。
- 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
誰が何株を引き受けるか、ということです。 - 上記①と引換えに発起人が払い込む金銭の額
誰がいくらで株式を引き受けるか、ということです。 - 成立後の株式会社の資本金および資本金準備金の額
例えば、上記①~③は以下のように定めます。
「発起人Aが割当てを受ける設立時発行株式の数 1,000株
払い込むべき金額 1,000万円
資本金の額 600万円 資本準備金の額 400万円」
なお、上記①~③は原始定款に書いてしまう方法もあります。
原始定款に書いてしまえば、設立登記申請時にこの事項に関する「発起人の同意書」は省略可能です(会社の設立について④定款を作成する 定款の記載内容と設立登記申請書の添付書類との関係 記事参照)。
資本金をいつ、どこに払い込むか
発起人は、設立時発行株式の引受け後、遅滞なく、引き受けた設立時発行株式について全額の払込みをしなければなりません(会社34①)。
定款の認証後に払込みしないといけないの?
払込みの時期ですが、定款の認証前であっても、定款の作成または発起人全員の同意の後であれば構いません。実務では定款の認証後すぐに登記申請を行うことがよくあります。
この払込みは、銀行などの金融機関に対してしなければなりません(発起人の代表に金銭を手渡しするのでは、ダメです)。
例えば、発起人が1人の場合は自分の口座で出金と入金をします。
資本金の払込みのポイント
「発起人が自分の口座で出金と入金をする」という一見無駄な手続きに思えるかもしれませんが、資本金の払込みのポイントとしては、この「入金をした事実」という事実が重要です。
登記申請の際に添付書類として
「払込みがあったことを証する書面
(=設立時代表取締役が作成した金融機関に払い込まれた金額を証する書面+払い込まれた金額が確認できる金融機関口座の通帳のコピー」
を添付します。
ですので、上記のことさえ証明できれば、払込金額が入金された後に、入金された金銭を引き出しても(登記申請時に口座の残高が0であっても)構わないということになります。
以上、資本金の払込みについてご説明しました。
会社設立する際に何かわからないことがありましたら、会社設立登記の専門家である司法書士の黒坂事務所までお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール
-
川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。
最新の投稿
- 日常業務2024年11月13日業務日誌始めました。~川崎アゼリア相談会~
- 相続2024年9月26日相続関係説明図について
- 相続2024年9月24日法定相続情報証明制度について
- 相続2024年9月20日相続人がいない場合の財産について