財産管理等委任契約について

Kuroshoshi

今回は「財産管理等委任契約」についてお話します。身体能力の衰えにより自分の財産管理が難しくなってしまった場合に対応する手段として有効なのですが、どのような内容なのでしょうか。

財産管理等委任契約の概要

 財産管理等委任契約とは、認知症等による判断能力の低下はないものの、病気や事故などによる身体能力の衰えにより自らの資産管理が負担になったり、金融機関に行くことが難しくなってしまったという場合に、自分が信頼する人に自分の財産の管理などを委任する契約のことをいいます。
 この契約は、本人が判断能力がある間に締結することができ、成年後見制度とは異なります。

財産管理等委任契約の特徴

 財産管理等委任契約の特徴は、以下のとおりです。

  • 委任内容の自由設定
    預貯金の引き出しや各種支払の代理、不動産の売買、投資などの財産の管理から、医療機関との連絡、介護施設への入居手続きなど療養看護に関する事務まで、契約当事者間で幅広く自由に設定できます。
  • 判断能力があるうちに利用可能
    判断能力が低下する前から利用できるため、成年後見制度よりも柔軟です。
  • 公正証書の作成
    私署証書でも有効ではありますが、契約の重要性に鑑みて公正証書でも作成がのぞましく、社会的な信用を高めることができます。

任意後見契約との違いは?

  • 有効になる時期
    財産管理等委任契約は、契約時。任意後見契約は、判断能力が不十分になった時。
  • 委任者
    財産管理等委任契約は、判断能力がある人。任意後見契約は、判断能力が不十分になった人。
  • 手続き
    財産管理等委任契約は、契約のみ。任意後見契約は、後見監督人の申立てが必要。

財産管理等委任契約のメリットとデメリット

財産管理等委任契約のメリットは、以下のとおりです。

  • 柔軟性
    委任内容を自由に決められるため、個々の状況に応じた対応が可能です。
  • 手続きの簡略化
    契約を一度だけ結ぶことで、一つひとつの処理ごとに委任状を作成する手間が省けます。
  • 継続性
    判断能力が低下しても契約は継続され、死後の事務処理も含めることもできます。

財産管理等委任契約のデメリットは、以下のとおりです。

  • 社会的信用の低さ
    公的な書類が作成されないため、社会的な信用が低いです。
    この点は、契約を「公正証書」にすることでクリアすることができるかと思われます。
  • 監督者の不在
    成年後見制度のような監督者がいないため、受任者の行動をチェックすることが難しいです。
    この点は、本人保護の観点から任意後見契約とセットで締結し(いわゆる移行型任意後見契約。)、判断能力が低下して不十分となった際に任意後見契約が発動するように設計することでクリアすることができるかと思われます。

財産管理等委任契約を締結する際の注意点

 財産管理等委任契約を締結する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 委任先の選定
    信頼できる人を慎重に選びましょう。
  • 契約内容
    委任の範囲や、受任者の責任を明確にしましょう。
  • 費用
    専門家(弁護士や司法書士など)にお願いする場合は、その費用や契約書作成費用などが発生する場合があります。

 以上、財産管理等委任契約について概要をご説明しました。財産管理等委任契約は、将来に備えて、自分の財産を安心して任せられるようにするための制度です。
 財産管理手続についてわからないことや、現在・将来の不安・悩みなどがありましたら、川崎の司法書士黒坂事務所までお気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎の司法書士 黒坂浩司
川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。