不動産決済で名変・抹消のみ申請を担当し、移転・設定は他の司法書士がするケース~川崎の司法書士がちょこっと伝える決済のコツ~
今回は、不動産決済で名変・抹消・移転・設定の登記がある場合のうちの一部(例えば名変・抹消)の申請のみを担当し、その他(移転・設定)は他の司法書士が申請を担当するときのちょっとしたコツを解説します。
不動産決済で申請の一部を担当するケースとは?
不動産決済で、お付き合いのある不動産業者(仲介)から「名変・抹消のみ」の申請をお願いされることがあります。
不動産売買についての登記費用(「所有権移転・抵当権設定」)は買主が負担するのが一般的です。売買契約書等で司法書士を売主側の業者が指定するなどの特約がない場合などには、買主が司法書士を探す(指定する)こともできます。自分が探してきた司法書士に登記をお願いすることで少しでも費用を抑えることができる、というわけです。
所有権登記名義人住所・氏名変更(いわゆる「名変」)と「抵当権抹消」は売主負担となっている契約が一般的です。買主が指定した司法書士に全てをお願いするという場合もあるかもしれませんが「常日頃担当してもらっている司法書士に一部でもお願いしたほうが何かと安心」と思う業者もいますので、その場合は売主負担分を業者が指定した司法書士、買主負担分を買主が探してきた司法書士、というように各申請ごとに担当する司法書士が異なる、ということが起こります。
各申請で担当する司法書士が異なる!どうしたらよいの?
上記のように、各申請で担当する司法書士が異なる場合、困りますよね。特に連件申請をどうするのか、という問題です。この場合の手順について主にオンライン申請を前提にお話しをしていきたいと思います。
- 1.まずは、買主負担側司法書士と連絡を取る
- まずは、買主が探してきた(指定した)司法書士とご挨拶兼ねて連絡を取ります。連絡先は業者から教えてもらいます。相手側司法書士とそこで決済当日の段取りを話し合えるのであれば、その方向性だけでも決めておくと気持ち的にも楽になるかと思います。
- 2.決済数日前までに当日の段取りを決めておく
- 相手側司法書士とメールや電話等で、決済の数日前までに当日の段取りについて決めておくとよいです。
例えば私が経験した不動産決済の場合、決済当日、私は自分が担当する申請についての売主の本人確認、意思確認、書類の確認・説明と委任状に捺印ができたらすぐさま退席をして、抹消書類を取りに行く、という感じで相手側司法書士と段取りを決めておきました。
売主に負担してもらう(自分がいただく)司法書士報酬は、事前に業者を通じて売主に現金で用意してもらうように伝えておき、退席前に回収できるようにしておきます。
相手側司法書士から融資実行の電話連絡をもらい、その後、抹消金融機関の着金確認を私のほうで行い、相手側司法書士に連絡して決済終了、私は抹消書類を受け取る、という感じです。
- 3.事務所に戻り登記申請をする
- 決済が終わり、それぞれ事務所に戻り登記申請の準備をします。その際の登記申請書の書き方にコツがあります。
登記申請書の「その他事項」欄に「本件抵当権抹消登記と、令和●年●月●日付で後に申請される所有権移転登記(代理人●●●●司法書士)とは連件扱いとされたい。」
と記載します。
そしてそのオンライン登記申請後、「受付番号」「受付年月日」を相手側司法書士に伝えます(「受付のお知らせ」をPDFかFAXします)。
相手側司法書士はそれを受けて自分の登記申請をします。その際登記申請書の「その他事項」欄に「本件所有権移転登記と、令和●年●月●日受付第〇〇号(代理人●●●)申請の抵当権抹消登記の申請は、連件扱いとされたい。」
と記載します。そうすることで連件扱いとなります(ただし、受付番号はその間に登記申請が入ることもあるため連続した番号にならない場合があります。)
以上、不動産決済で各申請の担当する司法書士が異なる場合の、申請方法について解説してみました。
主に同業者向けですので、すでに知っているよという方は多いかもしれませんが「あれ、どうするんだっけ?」というときに振り返ってみてもらえるような記事になればよいなと思い書かせていただきました。今後ともよろしくお願いたします。
投稿者プロフィール
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川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。