任意後見契約について
今回は「任意後見契約」についてのお話です。「将来の認知症等による判断能力の低下に備えたい」というニーズに対応する制度の一つなのですが、どのようなものなのでしょうか。
任意後見契約とは
任意後見契約とは、認知症等により、判断能力が低下してしまった場合に備えて、あらかじめ信頼できる人に将来の自分の生活・療養看護・財産の管理をお願いし、その事務に代理権を付与する委任契約のことをいいます。判断能力が低下したときに家庭裁判所により任意後見監督人が選任された時から効力が生じます。
前回記事にも書きましたが【参照記事:配偶者がいない場合の相続について①~後見・信託~任意後見制度(にんいこうけんせいど)について】、簡単にいえば「将来自分が判断能力が低下してしまったら財産管理をお願いします」という契約のことです。
任意後見契約のメリットと
デメリット
任意後見契約には以下のメリットがあります。
- 認知症などの将来の判断能力の低下に備えることができる
認知症になると、自分の意思で行動することが難しくなります。任意後見契約があれば、あらかじめ決めておいた人に、自分の代わりに財産管理や生活のサポートをしてもらうことができます。 - 本人の尊厳を保つ
利用者は、判断能力低下後の自らの支援者を自分で選ぶことができ、支援方法をあらかじめ自由に定めることができます。要は「自分で自由に選べる」ということです。 - 家族への負担軽減
家族に介護の負担が集中してしまうのを防ぐことができます。 - 効力発生後は、任意後見監督人を通じた裁判所の監督を受けられます。
また逆に、任意後見契約には以下のデメリットがあります。
- 費用がかかる
公証人への手数料、任意後見人・後見監督人の報酬など、手続に費用がかかります。 - 手続きが煩雑で時間がかかかる
契約内容を決め、公証人に依頼し、家庭裁判所への申立てなど、手続が煩雑で時間がかかる場合もあります。 - 任意後見人の選定が難しい
信頼できる任意後見人を探すのが難しい場合があります。 - 死後事務はできない
任意後見契約は本人が死亡すると終了するため、死後の財産管理や葬儀の手続きなどは別途「死後事務委任契約」を締結する必要があります。
任意後見契約の方法
任意後見契約は公正証書によってしなければなりません(任意後見契約3)。公正証書が作成されると、公証人の嘱託により任意後見契約の内容が登記されます(公証人法57ノ3)。
任意後見契約手続きの流れ
任意後見契約の手続きは、基本的に以下のような流れとなります。
- 1.任意後見人の選定
- 信頼できる人(専門家である弁護士や司法書士など)を任意後見人として選びます。
- 2.契約内容の決定
- 任意後見人に依頼する具体的な内容を決めます。
- 3.公正証書の作成
- 公証役場で任意後見契約の公正証書を作成します。
- 4.家庭裁判所への申立て
- 判断能力が低下した際に、家庭裁判所で任意後見監督人の選任を申立てます。
任意後見契約の手続きにかかる費用
任意後見契約には、基本的に以下の費用がかかります。
- 公証人の基本手数料:契約1件につき、1万1,000円。公証人の出張を依頼した場合は追加料金が発生します。
- 公正証書作成費用:証書の枚数によってことなりますが、通常2~3万円程度です。
- 登記嘱託手数料:約1,400円
- 収入印紙代:2,600円
- その他費用:郵送費、後見監督人への報酬、弁護士や司法書士などの専門家に手続きをお願いした場合はその報酬など。
以上、任意後見契約について概要をご説明しました。
任意後見契約を検討したいけれど、手続についてわからないことや、不安・悩みなどがありましたら、川崎の司法書士黒坂事務所までお気軽にご相談ください。
投稿者プロフィール
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川崎で開業しております司法書士の黒坂浩司と申します。
得意分野は相続関連手続き、不動産登記、法人登記(会社設立等)です。
お客様の悩みに寄り添い、身近な法律・登記の専門家としてその解決に向けたお手伝いをさせていただきます。困ったことがありましたらどうぞお気軽にご相談ください。
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