遺言執行者について
今回は遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)について少し掘り下げてみたいと思います。遺言執行者には誰でもなれるのでしょうか。その行為の効果や権利義務はどのようなものか。遺言執行者がいる場合といない場合ではどう異なるのでしょうか。
遺言執行者とは
前回の記事でも少し述べましたが、原則として遺言書の内容を実現するには相続人全員で共同して行います。しかし、遺言書の内容によっては、寄付や遺贈で相続人以外の者に対して遺産を取得させる場合、相続人が嫌がるケースも出てきます。このため相続人全員に代わって「遺言執行者」という1人の人に、遺言書の内容の実現(「遺言執行業務」といいます)を任せる制度があるのです。
遺言執行者を決めるには
遺言執行者の指定(選任)
遺言執行者を決めるには二つの方法があり、
- 被相続人があらかじめ遺言書に遺言執行者を記載する方法で指定する、又は遺言執行者の指定を第三者に委託する方法(民法1006条①)
- 相続開始後に相続人ら利害関係者が家庭裁判所に「遺言執行者選任の申立て」を行い、裁判所に遺言執行者を選任してもらう方法(民法1010条)
というものです。
1.は、職業等の制限はなく、家業を継ぐ相続人等、最も多くの遺産を取得する者を遺言執行者として指定することがよくおこなわれています。第三者は弁護士や司法書士などの専門家が指定される場合が多いようです。なお、遺言執行者に指定された者は、当然に遺言執行者になるわけではなく、遺言執行者への就職を承諾することが必要です(民法1007条①)。
一方、2.は裁判所の選択となりますので、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれます。
専門家に任せるのも一つの手ですが、選任に時間を要したり報酬が発生したりします。ですので、これまでの被相続人の財産や人間関係をよくわかっている人に遺言執行をしてもらいたいなどの場合は、遺言書に遺言執行者に誰を指定するかを記載したほうが良いでしょう。
遺言執行者になれない者(欠格事由)
以下の①および②の者は、遺言執行者になれません(民法1009条)。
- 未成年者
財産を管理する能力がありませんので、未成年者は遺言執行者にはなれません。 - 破産者
経済的な信用を失っていますので、破産者は遺言執行者にはなれません。
遺言執行者の行為の効果とその権利義務とは
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生じます(民法1015条)。また、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条)。遺言執行者は相続人の利益のためではなく、遺言者の意思を実現するために行動すればよいことが明記されました。
遺言執行者がいる場合
遺言執行者がいる場合といない場合でどう異なってくるのでしょうか。
相続人の行為制限
遺言執行者は上記のとおり、遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有します。よって遺言執行者がいる場合には、遺言執行者の権限が及び相続財産については、相続人といえど、処分その他遺言の執行を妨げるべき行為ができなくなります(民法1013条①)。
投稿者プロフィール
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